恋人はクロスバイク

去年のイヴは何をしていたのかもう憶えていない。多分何もしなかったのだと思う。薄ら寒い話ではあるのだけれど、その事を特段残念だとも悲しい事だとも思わなかった。そもそもここ数年ずっとそんな感じだったし。そして今年のイヴ、つまり本日。僕はこれから自転車を漕ごうとしている。流石にサンタクロースの格好をして漕ごうと言うほど酔狂ではないし、こんな夜分にそんな格好をすれば、不審人物として尋問されるだろう。だから普段と何ら変わらない何時も通りのエクササイズには違いない。ただ、そんな事をして過ごすイヴと言うのは生まれて初めてであり、きっと忘れられないイヴになるのではないだろうか、などと思っている。不況が叫ばれる昨今とは言え、街に出れば幾ばくかのイルミネーションにはお目にかかれるだろう。それを横目にしながら走る自転車というのは一体どんな気分なのだろう。まあ綺麗だなくらいは思うのだろうけれど、まずは余所見をして事故など起こさぬように気をつけたい。尤もこれから先、何年そんなイヴが続くのかと言えば甚だ疑問で、人は一途ではいられないし、僕はといえばその世間一般の平均値よりも更に移り気であるから、来年には自転車のことなんか忘れ去っているのかもしれない。それでも少なくとも2008年のクリスマスイヴ、僕は自転車に乗る。アニメを見て過ごすでもなければ、音楽を聴いて過ごすでも、ましてや愛する人との甘い時間を共有するでもない。それが良い事なのかは今は解りかねるけれど、ただひとつ間違いないのは、外の寒さ程には僕の心は寒くない。2008年は新しい趣味との出会いの一年だった。などと後からしみじみ思えれば良いのだけれどね。では、行って来ます。