昨日の話

午前中はずっと雨でこれは自転車は無理かなと思っていたら、午後には晴れ間が見えたりしてちょっと期待したのだけれど、路面はあまり乾いていない様子だったので結局諦めて休養日とした。天気ツンデレ。考えてみればここ最近にわか健康志向で、酒もろくすっぽ飲んでいなかったので、どうせ休養ならばパーッと行くかという事で、ツレと最近地元で発見したお好み焼き屋へと繰り出した。その店は古びた扉を開け地下へ階段で降りるのだが、何やら階段の中腹でじいさんが立ち止まっている。どうしたものかとよく見れば、その先に、足が悪いのだろう。結構ただ事ではない杖を片手に、ばあさんがゆっくりと階段を降りていた。この老夫婦の後ろを我々も一歩一歩とゆっくり階段を降りていると、じいさんが振り向いて「ごめんねえ。待たせちゃって。」と気さくな笑顔で話しかけてきた。こういう局面に弱い僕は「いや・・・そんな・・・。」といった具合に口ごもっていると、後方でツレが「ゆっくりで結構ですよ。お構いなく。」と元気良く答えた。僕はいつもこうだ。助けてもらってばかりで。ようやっと店に着くと、どうやらこの老夫婦は常連のようで、じいさんがまたでかい声で「お客さん連れてきたよ!家の息子夫婦!」などと言ってお店のおばちゃんを笑わせた。僕らは丁度隣の席に陣取ったのだが、僕はと言えば何だか気恥ずかしいけれど、悪くないなと思っていた。程なく僕も結構酒が回ってきて、ふと隣のじいさんを見ると、キープしていたと思しき「いいちこ」のボトルを飲んでいたのだが、おもむろに店のおばちゃんに「ちょっとコップをさ!一個ちょうだいよ!」と今更何を注文してるのだろうと思ったら、受け取ったコップに「いいちこ」をなみなみ注いで「お兄ちゃん今飲んでるチューハイ、少なくなったらこれで割りなよ。」と僕にそれを差し出した。じいさんも相当酔っていると見えて、「いやあ、お二人がさあ、後ろからゆっくりついてきてくれて、なあんか俺嬉しくなっちゃってさ!飲みなよ!」ばあさんの方を見るとちょっと照れくさそうに、ホントにこの人は酔っ払うと仕方なくてすいません。みたいな顔をしていて、嗚呼。悪くないな、と。僕はその「いいちこ」を有難く頂戴して、僕らの方が食事が先に終わったので、老夫婦にお礼を言って店を後にした。良く笑う素敵な老夫婦だった。そして良い酒だった。だからだろうか。思いのほか酔っ払ったのだけれど、こういう吉日もある。悪くないな。